幸せのカタチ



今日の終わりと明日の始まりを貴方と共に―――――。



それはひっそりと、そしてとても自然に始まった恋だった。
まるで一日が終わって始まるかのようにラビとミランダは息を潜めて寄り添う。
何もかも放り出してしまいたいほど愛しているけれど、現実には放り投げられない
荷を背負っているから、その矛盾による隙間を埋めるかのように抱き合うのだ。

ラビは眠りが浅いミランダの為に彼女が眠りにつくまでそっと髪をなで続ける。
自分が寝ない限りラビが寝ないことをわかっているミランダは、少しでも彼を
休ませられるように、とラビの心音を子守唄代わりに眠りにつくのだ。
その時の二人の間に、言葉はいつもない。必要、ないのだ。

今日という一日の終わりと、明日という一日の始まりを一緒にいられることに
心から感謝して。そしてそんな日が一日でも続くように心から願って。
そうやっていつも二人は眠りにつくのだ。

互いにやるべきことを抱えている身である。こうして二人でいられる時間はごく僅かで、
だから一緒にいられる時は互いしか見つめずに、というのが暗黙のルールだった。
二人で過ごす時間は幸福に満ち足りたものだけれど、それでも時々思ってしまう。
一緒にいられる『今日』という日が永遠に続けばいいのに、と。
こうしていられるなら『明日』なんていらないのに、と有り得ないことを願ってしまう。

どれほど渇望しても、『今日』という日は必ず終わり、『明日』という日は必ず
やってくるのだ。絶対に覆されることのない、未来。
始まりがあれば必ず終わりがある。例外はないのだ。ラビとミランダにとっても。
だからこそ、大切に思えるのかもしれない。

いつかは訪れる決別があるからこの恋はとても脆く貴重なのだ、と。
そして、こう思うのだ。


報われることが全てじゃない。そして結ばれることが全てじゃない。


それを教えてくれたのは間違いなく目の前の相手で。
教えてくれて有難う、を込めてキスを贈る。例え、この恋の結末がとても悲しい終わりを
迎えたとしても、目の前の人は唯一無二の人だから。だから優しいキスを。




――――――――それは、今だけ許されている愛情表現だから。


<終わり>

今しかできない愛情表現だからこそ、精一杯の温もりと優しさを。そして愛を。