漣の調べ



飾り気のない真っ白なシーツは、時に極上の音色を奏でる。




ミランダが熱い気持ちで寝返りをうつと、シャラシャラと音が鳴りまるで音楽のように
聞こえた。ミランダはその音が好きで、もっと聞きたくてシーツの上を何度も
足を滑らす。特に彼に抱かれている時に聞く音は格別なのだ。

真っ白なシーツが、二人の身体から滴り落ちる雫のせいで湿り気を帯びた時、
奏でる音色が変わる。シーツの皺は楽譜の五線譜となり、それに合わせて
音色も、綺麗で、いやらしい音に変わるのだ。恥ずかしさのあまりに耳を閉じて
しまいたくなるけれど、ミランダの身体に指を滑らす彼がそれを許してくれない。

だからせめてもの報復に、とミランダは彼の背中に手を伸ばす。ちょっとだけ爪を立てて。
激しい音色の時には彼の背中に食い込んでしまう爪先。痛いはずなのに、それでも
彼はミランダの身体を滑らす指を止めることはない。
むしろ、さらに指を滑らせ、徐々に、そして確実にミランダを快楽へと導いていくのだ。

行為の最中にミランダは彼の名を呼ぶ。彼もミランダの名前を呼ぶ。無意識のうちに。
そして縋りつくかのようにミランダの細い両腕が彼の首に回された。
その腕にすら彼は悪戯をしかけるのだ。ミランダの目を見つめながら、ツーッと舌を滑らす。
たったそれだけのことなのに、ミランダの背中はぞくぞくするのだ。

目の前の彼に酔っているのか、与えられる愛撫に酔っているのか。両方なのかは
わからないけれど、今のミランダはそれすら考えられないほど行為に溺れている。勿論、彼も。
こうしてベッドに入るのは数え切れないけれど、それでも飽きることなく二人は抱き合う。
それこそ骨まで喰らい尽くすかのように貪り愛し合う。

「まだ…足りない。」

いつもの明るい朗らかな彼から想像もつかないほど熱く低い声で囁かれ、それだけで
ミランダの背中は仰け反る。喘ぎ声のせいですでに喉はカラカラでロクに言葉も発せない。
だから返事の代わりにミランダは彼の背に手を伸ばすのだ。
足りないのは同じ、という意味を込めて。
容赦なく与えられる悦楽に、再びミランダの爪が彼の背中に食い込む。

本来なら痛いはずなのに、彼の神経はそれを認めなかった。むしろミランダが感じている 度合いを示す証拠として受け止めているのだ。 そしてさらにミランダを高見へ昇らせるために行為に没頭する。 聞こえるのは二人の熱い吐息と粘着音。そして足が滑るシーツの音だけ。
皺一つなかったシーツはぐちゃぐちゃになり、所々に液体が零れた跡が残る。





極上の音色は二人の耳にしか届かない。



<終わり>

二人にしか聞こえないのは、二人だけにしか奏でられないメロディ。